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高齢者
足の老化・サルコペニア
平成29年度「内閣府の高齢者の健康に関する調査結果」によると、
以前は問題なくできていたが最近特に難しいと感じる動作は
1位 「少し重いものを持ち上げたり、運んだりする」(25.3%)
2位 「立ったり座ったりする」(14.6%)
3位 「階段を1階上まで上る」(13.6%)
いずれも「足腰の弱り」が上位に来ました。
また、日本能率協会総合研究所の「高齢者未充足ニーズ調査2019年」よると、
(全国に居住する60歳から90歳までの高齢者を対象)
「何かに捕まらないと立ち上がりが大変」
「長い距離をあくることが億劫だと感じる」
といった困りごとは、高齢になる程発生頻度が高まり、その傾向と連動して「何か良い商品やサービスを利用することで解消・改善したい」の割合が高くなりました。
またある研究では、
・50歳以降は、筋肉が1年間に1%ずつ萎縮する。
・太もも(大腿前筋)は、不活動により、2日で1%減少する(通常の1年分に相当)。
・入院などで2日間寝たきりの生活を送ると太ももの筋肉は1年分、2週間だと7年分減少する。
(健康ネット 貯筋運動プロジェクト 貯金のすすめ)
http://www.health-net.or.jp/tyousa/tyokin/susume.html
その一方で、加齢に伴い筋肉量が減少する「サルコペニア」が問題になっています。
サルコペニアとは、高齢になるに伴い、筋肉の量が減少していく現象です。
25歳から30歳頃から進行が始まり、生涯通じて進行しています。
主に不活動が原因と考えられていますが、そのメカニズムはまだ完全には判明していません。
(厚生労働省ホームページ:サルコペニア e-ヘルスネット より)
頻繁につまずいたり立ち上がるときに手をつくようになると症状はかなり進んでいると考えられます。
特につまずきは、当人や周囲が注意力不足のせいだと思い込んでいることが多いため、筋力低下が原因と気づかない場合があり、注意が必要です。
サルコペニアを和らげるには
NHK「みんなで筋肉体操」で有名な近畿大学 谷本道哉先生は次のように行っています。
「30代で片足で立ち上がれなければ、80代で自力で立ち上がれなくなる」
なんとも衝撃的な事実ですね!
全身には大小約400個の筋肉があります。
そのうち、立ったり歩いたり姿勢を維持したりといった日常生活に必要不可欠な筋肉は、次の3つ。
・太もも(大腿四頭筋:膝を伸ばす)
・お尻(大臀筋:脚を後方に振る)
・腹筋と背筋(胴と頭を支える)
これらは「抗重力筋」もしくは「姿勢維持筋」と呼ばれ、加齢の影響を受けやすいことが分かっています。
例えば
太もも(大腿四頭筋)の筋肉量:80代の平均値=30代の平均値の半分程度
↓
筋力は筋肉量に比例するので、
「30代で片足で立ち上がる筋力がなければ、80代になった時に自力で立ち上がることが困難になる可能性が高い」と言うことになります。
でも、諦めないでください!
筋肉は鍛えることで何歳になってからでも強く大きく発達させることができます。
筋肉の老化=サルコペニアを防止するには、
・ウォーキング・ジョギングなどの運動をする
・活動的に生活する
高い効果を得るためには、
レジスタンス運動(筋肉に負荷をかけて標的の筋肉を直接鍛える運動)
・スクワット
・腕立て伏せ
・腹筋運動
↓
レジスタンス運動によって、サルコペニアによる筋肉の萎縮を概ね1/3程度に抑えることができると言われています。
(参考:厚生労働省 e−ヘルスネット QOLの維持・向上に大切な筋肉は?)
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/exercise/s-04-002.html
漢方で考えるサルコペニア
漢方で考える老化は、五臓六腑全体の衰退とも言えます。
その中でも、筋肉は「脾」と「肝」と「腎」が関係しています。
○「脾は肌肉(筋肉)を主る」
脾(胃腸)の消化吸収機能が衰えると、筋肉の栄養が足りなくなり、筋肉が痩せ、軟弱になります。
○「肝は筋(筋膜・腱)を主る」
肝血が不足すると、筋膜・腱を正常にコントロールできなくなり、筋肉がつる、手足が震える、関節の運動障害、疲労などが生じます。
○「腎は精を蔵す」
精は人体の生長発育生殖、各臓腑器官の生理機能を行うために必要です。
精の減少は、筋肉・筋膜・腱を司る「脾」「肝」も衰えます。
五臓六腑と筋肉の関係を考え、次のようなことに気配りしてみましょう。
筋肉を弱らせないようにするには、
○胃腸を労る食生活を!
・よく噛んで食べましょう
・満腹まで食べずに腹八分目に慣れましょう
・夜遅い食事は止めましょう
○タンパク質をとりましょう!
・加齢と共に食事の量が減ります。肉や魚、卵、牛乳、豆など筋肉の材料になるタンパク質を意識して食べましょう
・消化力を助けるために、生ではなく加熱して食べましょう
○ストレスを避けましょう!
・過度のストレスは肝の働きを弱らせます
・適度な運動で気血の巡りを良くしましょう
○精の消耗を避けましょう!
・過労は精を過度に消耗します
・大病は精を消耗します
・過度な性生活も精を消耗します
延緩衰老
漢方では、「延緩衰老」という考え方があります。
延緩衰老とは、老化の進行を緩やかに伸ばそう、或いは現れる前に不足を補おうという考えです。
人は歳を重ねるごとに、記憶力の低下や動作の緩慢などが起こり、避けて通ることはできません。
サルコペニアも加齢と共に進行します。
筋力低下対策の機能性表示食品を取り入れたり、滋養強壮剤、胃腸や腎の虚弱を補う漢方薬を取り入れるのもおすすめです。